『みんな邪魔(更年期少女)』を読んで思う「ブスを解放できない女子会」

みんな邪魔

春だと言うのに花粉の影響か、すっかりダークサイドに行きがちなあたし。
今のメンタルには、真梨幸子さんの小説の『ゾワゾワ感』が一番マッチするみたいで、気になる作品を探しては図書館に借りに行く日々。

この前にお話しした「5人のジュンコ」以外にも読みたい小説が何作かあるんだけど、次に選んだのが『みんな邪魔』

本当は『更年期少女』として単行本で発表されたんだけど、文庫化に伴いタイトルを『みんな邪魔』に変更したみたい。

タイトルも装丁も『更年期少女』の方がキャッチーな気もするけど・・

「5人のジュンコ」に続き、「みんな邪魔」もとても楽しめたので、感想をまとめてみるわね!

『みんな邪魔(更年期少女)』のあらすじ

1970年代に「少女ジュリエット」で連載されていた『青い瞳のジャンヌ』は、未完のまま連載が打ち切られた伝説の作品。
『青い瞳のジャンヌ』は、連載終了から30年近く経過した今でも熱狂的なファンが多く、ファンクラブ活動も活発。

ファンクラブのメンバーは『青い瞳のジャンヌ』のリアルタイムで読んでいた中高年世代の女性がほとんどで、その中でもファンクラブを運営している幹部スタッフは『青い六人会』と呼ばれていた。
ファンクラブの参加者はネット掲示板で使うようなハンドルネームでお互いを呼び合っていて、青い六人会でもそれは同じ。

物語は青い六人会のメンバー間で展開されていく・・・
それは嫉妬だったり、見栄だったり、相手を陥れる嘘だったり、女性のコミュニティにありがちなドロドロが、お腹いっぱいに盛り込まれている。

『みんな邪魔(更年期少女)』の登場人物

青い六人会のメンバーは、

『エミリー』

40代前半。
青い六人会に半年前から参加した新参者。
若い頃に漫画家を志して上京するも挫折。
藁をもすがる思いで結婚した夫は定職に就かず、その上DV。

『シルビア』

50代前半。
メンバー最年長だが、ファンクラブの在籍年数は浅い。
セレブのような振る舞いをしているが、教養や品性のなさが滲み出てしまっている。
実は生活保護を受けているシングルマザーで借金苦。

『ミレーユ』

40代後半。
社会性がなく、突拍子のない発言をする。
重度のパチンコ依存症で定職に就いておらず、年老いた母親に寄生して生活している。
自分勝手な性格故に弟妹たちと折り合いが悪く、それが家族間の諍いの火種に発展していく。

『ジゼル』

40代前半。
上級公務員の妻で都心の一軒家に住んでいる。
青い六人会の中では一番裕福だが、夫や姑との不仲、一人息子の引きこもりなどが原因で、人知れず不満や孤独感に苛まれている。
そんな中、第二子を妊娠し高齢出産に臨む決心をするが・・

『マルグリット』

40代後半。
青い六人会のリーダーで、ファンクラブの全てのイベントを取り仕切っている。
中学生の頃、『青い瞳のジャンヌ』のファンクラブに所属しており、作者とも会ったことがある。
見栄っ張りな性格が祟り、夫や娘と折り合いが悪く、ストレス性の胃痛に苦しめられている。

『ガブリエル』

30代前半。
メンバー最年少。
容姿端麗で人当たりも良く、『青い瞳のジャンヌ』の二次創作の小説もファンクラブ内で人気がある。
そのためか、ファンクラブ内でも青い六人会の中でもアイドル的存在であり、常に場の調和に努めている。

謎が多い『青い瞳のジャンヌ』

少女漫画誌に連載され、その当時の少女たちを夢中にさせた『青い瞳のジャンヌ』

でも、途中から絵柄に変化があったり、想像を絶する展開の挙句、『打ち切り』という形で連載を終了したり、何かといわくつきの模様。

打ち切りのきっかけになった最終回は、とても少女漫画誌の内容とは思えない凄惨なもので、ショックを受けたファンが自殺をしたほど。

青い六人会メンバーの動向も気になるけれど、少しずつ『青い瞳のジャンヌ』の謎も解明されていく所もポイントね。

好きな物が一緒で集まっているのに・・

六人は『青い瞳のジャンヌ』を介し、一見とても仲が良さそうに見えるの。
各々にプライベートで闇を抱えているので、童心に帰れる『青い六人会』を心の拠り所にしているのよね。

でも、六人の状態から解散してしまえば、女同士でありがちな『その場にいない人の悪口』が途端に発生し、隠している不満が爆発する。

妬み、嫉み、不満、憎悪・・これらの感情がそれぞれの登場人物毎に細かく描写されていて恐ろしいんだけど、反りが合わない人と同じコミュニティにいなきゃいけない感覚、誰しもが知っているんじゃないかしら?

特に、女同士のコミュニティなんて、建前ではうまくやっている風に見せているもんじゃない?

あたしもそうだった、オカマだけど。

いくら趣味や好きな物が一緒でも、ネガティブな感情が生まれて来るコミュニティって事は、そこは自分の居場所じゃないと思うのよね。

青い六人会のメンバーは、ジャンヌの作中でテーマになっている『仲間』って言葉でお互いを縛っているんだけど、徐々に違和感が生じてくる。

プライベートが不満だらけだから、青い六人会を心の拠り所にしていたけど、自分の中の問題を見て見ぬふりしている事に気付くメンバーも・・

自分の「ブスな部分」を解放できない女子会

エッセイストの犬山紙子さんが著書で語っていたのだけど、女子会には二種類あるのよ。

一つは、

『自分のブスな部分を解放できるブス会』

もう一つは、

『マウンティングが飛び交う、心を許せない女子会』

前者に関しては言わずもがなだけど、後者に関しては『ママ友会』辺りが思い浮かぶわね。

作中の青い六人会も、ママ友会とやや近いニュアンスを感じる。
ママ友を心の拠り所にする人なんて、滅多にいなさそうだけどさ(笑)

ママ友は子供を介し集まるけど、可愛い我が子のためなら、多少は苦手な相手とも良好な関係を築こうと努力する気になるわよね。
青い六人会も同じで、愛してやまないジャンヌのために、本当はどうかと思っている相手とも建前では笑顔で付き合っている。

でもさ、内心、気に食わない相手に弱みなんて見せたくないでしょ?

だから見栄を張り、嘘をつき、嫉妬もする。

ブス会だったら、あっけらかんと自分の恥部も晒せるものなのよ。
マウンティングがない関係だからこそ長く続けていけるのに、ネガティブな感情が付きまとってくる集まりなんて、そりゃトラブルも起こるわよね。

まあ、青い六人会の場合は、それに拍車をかけるような争いの火種が投入されているんだけどさ・・

女のドロドロは浅いようで奥が深い

「女って下らない事で揉めてるなぁ」とか思っている男って多そう。
だけど、女同士って男と違って、嫌な相手ともうまく折り合いを付けようとするものなのよ(本日二回目)

男は『俺、あいつ嫌い』って思ったら、同じ空間にいないようにするでしょ?
だから、それ以上は揉めることもないのよね。

でも、女はそこまで極端じゃないから、揉め事が表層化した状態なら、彼女たちの中ではもういくつも事件が起きていて、全面戦争しなくてはいけない所までこじれているの。

ここに至るまで葛藤もあるはず。

だから『どうしてそうなったのか?』を紐解いて行けば、意外と奥が深いものなのよ。

女心があまりよく解っていない男性は、真梨幸子さんの本を読んで学習すべきだと思うわ。

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