それは会社での出来事。
前の仕事では、自分がおかまであることを面接の時点でばらし、初日からもグイグイおねえ系で通してきたのだけど、今の会社はそんな雰囲気じゃないし、男の人しかいない部署だから、大人しく過ごしているの。
でも、あたしの所作や話し方って、もはやおかまとして完成されているので、言わなくても周りの人は気付いているみたいなのよね。
ただ、生物としては「男」に分類されているわけで、ちょっとした力仕事がある時とかは、あんまり気が進まないけど、やっぱり手伝わなきゃって思うわけさ。
今日もね、けっこう大きめのOA機器を、他の階から執務室へ運ばなくちゃいけなくてね。
業務も暇だったし、同じ部屋で働いている男の人たち二人とあたしとで、運ぶことになったの。
でもなんだか、他の二人があたしに気を使ってくれて、持ち運びの部分は全部やってくれたのよね。
あたしは、機器の付属品を回収したり、運ぶ際にずらした机とか椅子を元の配置に戻したり、女の子的な役割だけで済んだわ。
なんか、あたしがOA機器に手を掛けるよりも先に、ササっと運んでくれた男二人の背中に、キュンとしちゃった・・
昔、働いていた会社で、バブル時代の亡霊みたいなババアが、あたしをおかまと分かっていながら、力仕事をお願いしてきてさ。
けっこう不愉快だったのよね。
だって、あのババア、自分が気に食わない事があると、机の引き出しに八つ当たりして、その反動でデスクの上のPCが倒れてきたこと、あたし知ってるわよ?
女の世界で長く生きてきて、ほんと「女って陰険で癖のある生き物だな」って思っていたけど、だからと言って「男だらけの世界」も辛いのよね。
でも、今日みたいに「女として扱われている」って感じると、悪くないかも。
ていうか、美人に生まれてきたら、こういう待遇が当たり前なのね。
あたし、ブスだからこんな経験は初めてなの。
ちょっと浮かれちゃったわ。
やっぱ、男に優しくされるのって、いいね。