自己肯定感の低い自分。理由を探す心の旅・前編

amayaeguizabal / Pixabay

あなたは「自己肯定感」って言葉の意味を知っている?
自己肯定感は、「自分は価値ある存在」と認められること。
良い部分だけでなく悪い部分も含めて、自分を受け入れられることでもあるのだそう。
今、自己肯定感は子育てをする上でも、注目されているらしい。

あたしは自己肯定感が低い

あなたは自分が好き?
あなたは自分に自信がある?
あなたは自分を認めている?

あたしは全部ダメなの。

あたしは何をやってもダメ、容姿は中の下、勉強は頑張ってもやっと真ん中ぐらい、運動神経は鈍い、不器用で芸術の才能もなし、頑張って働くけど転職ばかりしている。

こんな自分だから、あたしは自己肯定感が低いの。
努力をしても結果が出せないことが情けなくて、自分をもっと嫌いになってしまう。

その繰り返し。

努力を続けてきたのだから、前向きに取り組んではきたのよね。
ただ、自己肯定感が高まるような、成功体験は少ないのよね。

あたしはなぜ、自己肯定感が低いのか?因果について考える

「どうして自己肯定感が低いのか?って、いつも結果を出せてないからでしょ?次はもっと努力して、成功すればいいじゃないの」

ずっとそう思っていた。
自分はできる努力を、全部していないのだと。
ただね、この前テレビを観ていたら、ハッとする出来事があったの。

「この世には必然なんてない。全ては因果の連続である」

「因果」とは、原因と結果のことだね。
この後に、

「あなたはつまずきました。原因は靴紐が解けていたからです。次はつまずかないために、あなたは靴紐を結び直しました」

という例え話があった。

「靴紐が解けていた事が原因で、その結果、つまずいてしまった」わけだよね。

大事なのは、因果から解決策を見つけること。
この例え話の場合、靴紐を結び直して問題は解決した。
でも、問題に対して何も策を講じなかった場合、また同じ因果が待っている。
いくら前を向いていても、靴紐を結び直さずに歩き始めたら、またつまずいてしまう。

この例え話を聞いて、あたしが今まで繰り返してきた事は、靴紐を結び直さずに歩いてきたのと同じじゃないかって思ったの。

子供の頃まで遡る

あたしね、オカマなの。
やっぱり、子供の頃から女の子っぽい男の子だったのね。
歳が離れた姉が二人いて、やっと生まれた男の子だから、家族は期待していたみたいなんだけど、残念なことに生まれてきたのはオカマだったのよ。

あたしは乱暴な遊びが嫌いで、女の子たちとおままごとをしたり人形で遊んだりするのが好き。

小さい時はそれで良かったけど、成長するに連れて、そういうわけにはいかなくなるのよね。

小学校3年生ぐらいになると、男子と女子、別れて遊ぶようになるでしょ?
あたしは男の子が好きな遊びは苦手だったから、その頃からクラスの中で孤立するようになっていくの。

運動は苦手だったし、性格は女の子っぽいし、共通点が全然ないのよね。
男子からは「なよなよしてる」って、よく言われたわ。

あたしは「セーラームーン」みたいな、女の子向けのアニメが好きだったから、女子のグループに入って一緒におしゃべりしたかったの。

でも、きつい女の子が相手だと「気持ち悪い」って拒否されちゃう。
馴染める場所がどこにもなくて、学校では一人でいることが多くなったわ。

こんな事の積み重ねがきっかけで、考え方に悪い癖が付いたのだと思う。

「ありのままの自分では、他人は受け入れてくれない」

という自己否定は、私の性格に自然と染み付いていった。

思春期の頃に受けた「いじめ」

同級生から「気持ち悪い」「女の子みたいで変」って言われ続けて、あたしは焦るようになっていた。

学校で、いつも一人でいるのは嫌だったから、無理して男子に合わせて、なんとか友達もできた。

子供には子供の社会があって、やっぱりそこからは外れたくなかったの。

そうやって、なんとか小学校はやり過ごしたけど、中学校へ進学したら、新たに問題が出てきた。

体がだんだん男らしく変化していく、体毛が濃くなったり、声変わりしたり、あたしには我慢できないことだった。

体は男らしくなっていくのに、仕草や話し方は女の子っぽいまま。
あたしへの「気持ち悪い」という陰口が、また始まった。

中学校には、別の小学校から進学した子たちもたくさんいるから、あたしをよく知らない子たちから、いじめの標的にされた。

「死ね」「臭い」「気持ち悪い」「いなくなれ」

聞こえるように悪口を言われて、隣の席の子からは机を離される。
無視されるのは当たり前で、授業中にグループを作る時も一人ぼっち。

給食の時間に、班のみんなで机を向かい合わせにして食べるでしょ?
そういう時も、あたしの机だけ、正面を向いたままなの。休み時間もいつも一人だったわ。

家族からも言われた、「否定の言葉」

中学校は地獄だった。ちっとも楽しくない場所でも、不登校にならず学校に通い続けた。

子供の頃は無知だったから、本当に辛かったら逃げてもいい事を、知らなかったんだね。

それでも家にいる時間は安心できた。

そんなあたしの唯一の楽しみは、テレビやラジオの音楽番組で、いろんなアーティストの新曲をいち早くチェックすること。

うちの家族はカラオケが大好きで、あたしも小さい頃から流行っている歌には敏感だったの。
姉が二人いる影響もあると思うわ。
お小遣いはCDのレンタルにつぎ込んでいた。

あたしが中学生の頃は、小室ファミリーが大人気で、安室奈美恵や華原朋美が大好きだったな。

でもね、女性歌手の曲が好きなのに、どんどん声が低くなっていく。
声変わりする前は、女性歌手の曲を歌ってもおかしくなかったのに、今の声では全然合わない。

それでも、家にいる時ぐらいは、自分らしくしていたい。家族でカラオケに行った時は、いつも通り、好きな女性歌手の曲を歌ったわ。でも、

「声変わりしたのに、女の子の曲を歌っても気持ち悪いよ」

って、家族から言われた。

また「気持ち悪い」・・家にいても学校にいても、みんなが自分を「おかしい」と言う。
誰も

「そのままでいいよ」って言わない。

あたしは人前で、好きな曲を歌わなくなった。

高校進学

学校が嫌いだったから、本当は高校に進学するのが嫌だった。
でも、知らない子たちばかりの場所で、一からやり直せるんじゃないかと期待もしていた。

だけど、あたしは自信がなくて、クラスメイトに自分から話しかけることはできなかった。

入学して、初めてのお弁当の時間があった。
子供の頃って一人でお弁当を食べるのって、すごく寂しいことに思えて、誰かが誘ってくれないか待ったけど、既にクラスにはグループができ始めていた。

あたしに声を掛ける子はいなくて、初めてのお弁当は一人で食べた。

結局、あたしは高校でも友達作りに失敗した。

でも、なんとかクラスに馴染みたい。
あたしは、変に自分を隠さずに「オカマキャラ」として、振る舞うことにした。
自分のままでいることに、思い切って賭けてみた。

面白がって仲良くしてくれる子もいたけど、「みんなと同じが良し」とされる社会の中では、いじめの標的になるだけだった。

高校でのいじめは、もっときつかった

中学生の時に受けたいじめは、とにかく陰湿だったけど、高校では晒し者にされた。
掃除の時間、全く知らない男子のグループに、しつこく絡まれた。

同じクラスの誰かが「気持ち悪いやつがいる」と、噂を広めたらしい。
自分は相手を知らないのに、相手は自分を知っていて、からかわれたり嫌がらせされたりする。

知らない女子生徒に「キモい」と散々言われる。
ちなみに「キモい」って言葉、あたしたち世代から生まれたと思う。
あたしは「キモい」の走りなわけ。

文化祭や体育祭の写真に入ろうものなら、「なんで、あんたが写っているの?」と罵倒されることもあった。

親切なクラスメイト

そんな日々の中、人気グループの男子(今風に言うと1軍?)が、なぜかあたしに優しくしてくる。休み時間に話しかけてきたり、移動教室の時も隣の席に座ったり、好意的に接してきた。

その間は嫌がらせもなくなっていたし、あたしはその子のことを信頼し始めていた。

その子は「◯◯くん(あたしの名前)は、女の子よりもかわいいよ」って言い出して、あたしのことを褒めてくれた。
あたしもその子には素直になれて、ちょっと好きになっていた。

何よりも、安心して話しかけられる相手ができて、学校生活が初めて楽しくなった。

残酷な真実

移動教室があって、いつも通りその子と一緒に行動する。
「いつも一緒」がこんなに安心できるなんて知らなかった。
早めに着いた教室は、あたしたちしかいない。

いつも、その子はあたしの隣に座っていたけど、今日は一つ前の席に座った。そして、振り返って

「◯◯くんは本当にかわいいよね。」

って、いつもとは違う、真剣な顔で言った。

あたしは照れてしまって、なんとも言えない表情でうつむいてしまった。
そうしたら、その子が言った。

「・・・・マジでキモいんだけど」

あまりにも意外な一言に、びっくりして顔を上げた。

「おまえ、自分のことがかわいいって、本当に思ってんの?
今まで言ってきたこと、全部嘘だから。
ずっと一緒にいて思ったけど、おまえって本当に気持ち悪いな。
まあ、勘違いしてて笑えたけどな」

ニヤニヤ笑いながら、その子は言った。
その目は、今まであたしをいじめてきた子たちと同じだった。

ショックだったのに、なぜだかあたしは愛想笑いをしていた。
悲しい顔を見られたくなかったのかな?なんで笑ったのか、今では思い出せない。

あたしを傷付けた後、その子は違う席に移動していった。
そして、その日のお昼休みから、他の生徒からの嫌がらせが再開した。
どうやら、優しくされて調子に乗るあたしの様子を見て、皆で面白がっていたみたい。

結局、卒業するまで嫌がらせは続いたし、友達らしい友達もできなかった。

子供時代を振り返って・・・

自分の子供時代を振り返ってみて、自己肯定感が高まるような出来事は、何もなかったと思う。

よく、

「自己肯定感を高めるためには、成功体験が必要」

と言うけれど、何かに取り組む前に、自分の存在自体を誰も認めてくれないと、毎日をやり過ごすだけで精一杯になる。

この一連の出来事を経て、あたしは自分を認められず、他人にも期待できない人間になった。
卒業後の進路についても投げやりになり、進学も就職もしなかった。
学校は嫌いだから進学なんてとんでもない。
毎日、学校に来るだけで精一杯なのに、就職なんて全く違う世界の事を考える余裕もなかった。

そんなあたしに父親は厳しく当たって、家では肩身が狭かった。
何もしないわけにはいかなかったし、高校卒業後は近所の薬局でアルバイトを始めることにした。

だいぶ長くなってしまったので、ここで一旦区切るわね。
後編は大人になってからのエピソードです。

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