ふきげんよう。
ちょうど2年ぐらい前の話。
ああ、あの頃は世界中が未知のウイルスの脅威にさらされるなんて想像もつかなかった。
気楽な日々だったよ。
で、その気楽だった頃にさ、友達に誘われてハウスメーカーの催しに参加したの。
住宅展示場から参加者全員でバスに乗って会場へ。
くじ引きで高級食材がもらえたり、どっかの有名なお店のお弁当がタダで食べられたり、なかなか楽しいイベントだった。
それでさ、イベントの後に希望者は建築中の家を内見できるおまけがあってさ、冷やかしだけど参加してきたの。
案内されたその家がね、
「70代前半の独身男性が一人で住むための家」
っていう、あまりワクワクしない物件でさ…
その施主さん、その家で一人で生涯を終える覚悟をしているらしく、なんかもう「終活」の香りが漂っているのね。
一階のリビングがやけにスペースが広いし、窓も大きいの。
理由は何か分かる?
今よりも歳を取って、思うように動けなくなった時、介護ヘルパーさんに面倒をお願いすることになるでしょ?
たぶん、デイサービスとかのお世話になると思うんだけど、その時にさ
一階の窓に近い場所にベッドを配置、窓が大きいほうが介護する人も出入りしやすい。
↑こんなことを考慮しての設計なんだって。
ああ、一人で死ぬ覚悟ってさ、自分が元気じゃなくなった時のことも想定しなきゃいけないんだね。
今頃、あのお家は完成して、男性が一人で暮らしているはず。
一人で自分の死をみつめながら生きるって、どんな感覚なんだろうね。
事故にでも遭って死ななきゃ、あたしもいつか分かる日が来るんだろうけど…