『飲み会の締めにラーメン食べに行きたい女』の策略

sharonang / Pixabay

忘年会シーズンだねぇ。
あたしはいつもの女子会メンバーと来週末に1件あるだけだわ。
年末に一人でもやろうかな・・

ところで、飲み会と言えば思い出すのが「締めのラーメン」
男の人って飲んだ後にラーメンを食べるのが好きよね。
あたしはラーメンがそんなに好きじゃないし、ほぼ麺とスープだけで構成されている割には値段が高い食べ物だと思っているので、お店には滅多に食べに行かないわ。
ラーメン屋巡りしている人って、全然理解できない。

おっと、話が脱線した。

今日はこの「飲み会の締めのラーメン」にまつわる思い出をお話するわね。

サバサバ詐欺の美魔女同僚

あたしのかつての同僚に、いつもギラギラしてる女がいた。
年齢はその当時で40歳オーバーだったけど、メイクなり服なり外見にはかなり気を使っていて、けっこう若く見える。
顔も綺麗だったし、体型もキョンキョン(小泉今日子のことね)みたいなこじんまりした感じで、男性社員からは人気があった。
まあ、美魔女ってやつだね(あたしはどうかと思ってるけどね・・)

ちなみに、女同士のコミュニティでは、

「自分よりも美人な新人社員を片っ端からいじめる」
「生理前になると不機嫌になって、わけの分からない事で八つ当たりしてくる」

など、あまり評判は良くなかったけど、男の前では「気さくでサバサバしたお姉」を演じていたので、男性社員が集まる飲み会にもよく誘われていたらしい。
彼女の本性を知っている女性社員の間では「サバサバ詐欺女」って呼ばれていたけどね。

どんどん食われていく男性社員たち

女子の間では不評だった美魔女さんだけど、若手社員からおっさん社員まで男からの人気は安定していた。
「男からモテる事」で彼女は自尊心を満たすタイプみたいで「自分で自分を幸せにできないのなんて虚しいな」って、あたしは正直思うけど彼女は満足だったらしい。

美魔女さんは男性社員を捕食すると黙っていられない質で、誰と関係を持ったのかを自分で話しちゃうタイプ。
噂は瞬く間に広がっていき、オフィスの中は美魔女さんを介した『兄弟』がどんどん増えていく。

一体、なんで次々と男性社員は捕食されていくのだろう・・?
情報を整理すると、噂が立つのは大体が飲み会のあった3日以内ぐらい。
ということは、飲み会に秘密があるとあたしは睨んだのだった。

美魔女さんと同じチームに

美魔女さんは相変わらず男性社員を捕食していたけど、あたしはそんな彼女と同じチームで働く事になった。
ちょうどその頃、他の部署の男性社員と一緒に取り組むプロジェクトがあって、美魔女さんと他部署の男性社員と三ヶ月ぐらい一緒に仕事した。
他部署の男性社員はキャリア組のイケメンで、翌年には本社に異動になることが決まっていたらしい。
美魔女さんが早い段階から彼をロックオンしている事には、色恋には鈍感なあたしも気付いた。

あたしも飲み会に同行する事に・・

みんなで取り組んだプロジェクトが無事に成功して、「お疲れ様飲み会」を開く事になった。

美魔女さんが男性社員を捕食するのは、恐らく飲み会の直後。
ついにあたしは真相に迫る事ができるのか!!

飲み会のお店は個人経営の焼き鳥屋さん。
なんでも美魔女さんの行きつけらしい。
店主さんとは気心が知れている様子で、おすすめの美味しいメニューが運ばれてくる。

一仕事終えた後なので、場の空気は和やかな感じ。
達成感があるからお酒が進む。

美魔女さんを観察していると、お酒が進んでイケメン社員のガードが緩くなってくると、ボディタッチが増えていく様子。
なんか、名字じゃなくて下の名前で呼び捨てにしだして親密感を醸している。

そのうち、お開きの時間が近づいてくると、美魔女さんはこう言い出した。

「ねえ、締めにラーメン食べたい!◯◯(美魔女さんの名前)ラーメン食べに行きたい!」

美味しい焼き鳥でお腹いっぱいのあたし、ラーメンなんか全然食いたくない。

が、イケメン社員は陳腐な美魔女マジックに掛かってしまったのか、

「いいですね!ラーメン行きましょうか!」

って乗っかりだした。

ここで帰ってしまっては不完全燃焼になるので、渋々あたしも締めのラーメンに同行することにした。

深夜のラーメン屋にて

焼き鳥屋を後にした時点で、既に22時を回っていた。
終電を考えると、さっさと食べてさっさと帰らなければならない。
幸い、締めに選ばれたラーメン店は焼き鳥屋からそんなに離れていなかったので、急げば終電に間に合いそう・・

三人でラーメン屋に入店。
美魔女さんとイケメン社員は普通に一人前注文していたけど、あたしはお腹いっぱいだったので、ハーフサイズを注文した。
ていうか、お酒飲んだ後によく一人前食べられるわよね。

程なくして全員分ラーメンが揃った。
あたしはラーメンがそんなに好きじゃないし、お腹いっぱいで美味しいと思えなかったけど、美魔女さんは一口食べるなり、

「おいしい~!おいしいね☆」

と騒ぎ出した。

まあ、ほとんどイケメン社員に向けてた感じだったけど。

がしかし、次に驚くべき行動に出た!

「◯◯(美魔女さんの名前)もう食べられない!△△(イケメン社員の名前)食べて?」

!!!!????

自分で「ラーメン食べたい(矢野顕子か?)」ってあんなに騒いだのに、一口しか食べないの!?
えっ?ラーメン屋さんに謝れよ!

って、あたしは思ったけどイケメン社員はまんざらでもない様子で、

「マジですか?しょうがないなぁ」

なんてリアクション。

どうやら、二人分食べるつもりらしい。

一体、この後にどんな展開が待っているのか?

タイムリミットがやってきて・・

あたしはハーフサイズを注文していたので、早々とラーメンを食べ終えた。
しかし、イケメン社員と美魔女さんの方はなんかイチャついていて、あまり食が進んでいない。
まだラーメンがたくさん残っているのに!

そして、その時点で時計はもうすぐ23時に。

終電のリミットが迫ってきているので、あたしは強制退場。
ていうか、イケメン社員もあたしと終電は同じぐらいのはずだけど、まだラーメン食ってる。

自分の分のお金だけ置いてあたしはラーメン屋を後にし、終電に急いだのだった。

翌日のお話

なんとなく美魔女さんの捕食パターンは把握できたあたしだけど、決定打にかける。
次の日も仕事だったので、美魔女さんにあたしが帰った後はどうしたのか聞いてみた。

「あー、私が引き止めちゃったから△△が終電逃しちゃったみたいで、なんか悪いし始発までカラオケで付き合ったよ~」

・・嘘だ!

40歳を過ぎてオールして、翌日の仕事にそんなツヤツヤした肌で来られるはずがない!
イケメン社員の方も、オールした割には血色が良い。

絶対、どっかでちゃんと寝てる・・!

あたしは疑念でいっぱいだったけど、さすがにそれ以上は聞けなかった。

そして予定調和

例の飲み会から確か二日後、違うチームの同僚からこんな話をされた。

「なんかさ、◯◯さん(美魔女)が△△くん(イケメン)と一線を越えた(本当はもっと下品な表現でした、自粛)らしいよ?あんた、一緒に仕事しててなんか気づかなかったの?」

ああやっぱり!!
ラーメン屋からあたしが帰った後、美魔女さんはイケメン社員を捕食していた!!

もしかしたら、ラーメン屋の後にカラオケという密室に連れ込んでムードを作った後、我慢できなくなったイケメン社員を近くのホテルに連れ込んだのかも知れない・・・

美魔女さんは狙った男を家に帰さないために、恐らく締めのラーメン屋に誘導。
だいぶ酔っ払った振りをしてグダグダした後、気が付いたら終電を逃していたって状況を作り出しているに違いない。

一次会の飲み会・締めのラーメン・各々の会場でスキンシップを図り、徐々にパーソナルスペースを近づけて相手をその気にさせているに違いないわ!

締めのラーメンは本当に策略だったのか?後日談

その後も美魔女さんと同じチームで仕事を続けていたあたし。
それからも他所の部署の男性社員と一緒に仕事をする機会はあって、また同じような飲み会があった。

その飲み会にも美魔女さんお気に入りの年下男性社員が参加していて、この前とほぼ同じような展開に。
そして、あたしの期待通りに、

「◯◯(美魔女さんの名前)ラーメン食べたい!」

と、飲み会の終わり頃に騒ぎ出し、年下男性社員が一緒にラーメンを食べに行った。

ちなみに、あたしはもうラーメンには付き合わなかったけど、次の日に美魔女さんに聞いたら、

「終電を逃したから二人で朝までカラオケにいた」

と言っていた。
しかし、やっぱりどこからか噂が流れてきて、年下男性社員はご多分に漏れず捕食された模様。

恐るべし「飲み会の締めのラーメン」
ハンターみたいな女は、ありとあらゆる手を使うのね。
飲み会の前はちゃんとコンディションを整えているのかしら?

ていうか、ラーメンを二杯も食べさせられて、次の日に胃もたれしないのかな・・