ふきげんよう。
「純文学」がなんなのか、いまいちよく分からないので、図書館で「コンビニ人間」が借りてきて読んだの。
何年か前に話題になってたし、ページ数も少なくて読みやすそうだから、なんとなく選んでみたのだけど、
大変興味深い内容だったわ。
主人公の女性は一言にすれば「普通じゃない」のよね。
読み始めは「コンビニで働くのが天職」みたいな人の話かと思っていたけど、主人公の過去が明かされる辺りから、どんどん雲行きが怪しくなっていく。
主人公は、言動の一つ一つがエキセントリック。
そんな彼女に周りの人たちは頭を悩ませてきたのだけど、その事実を感じ取る力はあるのよね。
そして主人公は、場面場面で「普通」とされる発言や表情を他人から模倣して、「普通」を装い、家族を安心させることに務めるの。
ただ、傍から見ていると主人公にとっては「作業」のような感覚で、そこに感情は伴っていないのよね。
一見、なんの支障もないように毎日を送っているけど、「普通、そうでしょ?」みたいな「世間の暗黙の了解」に晒されて、主人公の生活は徐々に綻ぶ…というのが大まかなあらすじだと思うのだけどさ…
あたしはとにかく「居心地の悪さ」を感じてね。
物語は世間になんとなく蔓延っている「普通」がテーマになっているんだけど、まあさ「普通」ってなんなのよ?って話よ。
その「普通」に当てはまらないとさ、今度は「知っている形」にこじつけて、無理に納得しようとしてくるの。
人間ってさ、「よく分からないもの」に「不安」を感じるでしょ?
異質なものは異質なままで、受け入れることができないの。
だから、他人の本質を理解しようとせず、自分勝手にカテゴライズして安心しようとする。
あたしもセクシャルマイノリティに生まれてきたことで、こういう「決めつけ」「こじつけ」をたくさんされたから、主人公の境遇がなんか他人事じゃなくてさ。
この主人公に関してもね、ネットとかで「怖い」「気持ち悪い」、「発達障害なんじゃないか?」とか書いている人がいるわけ。
この「怖い」「気持ち悪い」が「よく分からないものへの不安」で、「発達障害?」が決めつけやこじつけだと思うの。
でもさ、この作品が言いたいのって、「異質なものは、そのまま受け入れればいい」ってことだと思うの。
「人の性質」に、理由やカテゴリーってそんなに必要かな。
「ああ、そういう人なんだ」でよくない?
今、コロナウイルスのせいで「こうあるべきでしょ?」って同調圧力が強くなってきているけど、改めて集団心理の怖さを思い知らされる。
主人公が晒されている環境も、そう変わらない気がする。
とにかく、いろいろと考えさせられる一冊でしたよ。