ふきげんよう。
久しぶりのブログ更新です。
ちょっと病んでいたので(いつも)、インプットの時間を多く作っておりました。
今さらですが、ずっと観たかった草彅剛主演「ミッドナイトスワン」を視聴。
物語開始から作品の世界に惹き込まれ、これは人にお薦めしたくなる素晴らしい映画だと思いましたよ。
ここから先、ネタバレを含むあたしの感想。
まず、トランスジェンダー当事者の苦境については丁寧に描かれているなと思った。
たとえば仕事に関する描写。
物語中盤で、ショークラブで働く主人公がもっと安定した収入を得るために、昼職の面接を受けるシーンがあるのね。
最初は女性の姿で面接を受けにいくのだけど、その時の面接官の態度。
いかにもデリカシーのなさそうなおじさんが「LGBTね、流行っているあれね」みたいな発言をするの。
それを聞いた女性の部下が発言を諫めるんだけど、あの変な空気感…
あたしも「当社はLGBTに理解があります!」って掲げている会社の面接で体験したことある。
部下の振る舞いはまだマシだけど、おじさんの方の「明らかな無理解」を感じる発言。
恐らく「私はインスタグラマーです」とかと、同じ感覚で考えているんだろうね。
そもそも「LGBT」っていう大きい括りも違和感があって好きじゃないけどさ…
性の話ってさ、後付け外付けな話じゃないじゃん。
生まれた時から持ったもので、内包された「性質」の話なのにそれを「流行り」ってさ…
けっきょく、その仕事は不採用だったらしく、主人公は慣れない力仕事を始めるのね。
伸ばしていた髪を短くして、男性の作業服を着て、男性の名前で…
女性ホルモンを投与している影響なのか、腕力のない主人公は荷物を落としてしまい、荒っぽい男どもにドヤされるのね。
こういうのも…
こういう「いかにもな男扱い」に子供の頃からずっと違和感があって、嫌で嫌でしょうがないから本来の姿になったのに、まともな収入を得るためには「男の役割」を果たさないといけない。
「自分」に生まれたことに絶望を感じる瞬間、どれだけの人が理解してくれるのだろう。
そこまでして献身的に尽くしたのに、少女は母親の元へ連れ戻されてしまう。
あんな最低な母親でも、少女は一緒にいたい…
ショックを受けた主人公は踏み切れずにいた性別適合手術を受けて、嫌悪していたあの閉鎖的な故郷へ帰る…
少女を迎えに行くため…
そこでもやはり無理解の嵐で、終いには化け物扱いされてその場を去る。
そして、絶望した彼女はあの悲惨な姿になってしまうのだけど、議論を呼んでいる体の状態はさておき、精神の状態についてあたしは的確に描いているのではと。
あたしも性別適合手術を受けるか、真剣に考えたことがあっていろいろ調べたのだけど、やはりホルモンの分泌はかなり乱れるらしいのよね。
その影響で鬱状態になる人も多いらしく、「なりたい体になったのに自殺してしまう人」もいるって。
背景には、主人公と同じように「本来の体になった後に思い描いていた希望や未来」が叶わず、余計に絶望してしまうのではないかしら。
主人公が少女の夢を支えて見守り続けることは叶わなかったけど、幸いにもあの母親が改心して養育をしっかり行うようになったため、少女は明るい未来を手にすることができた。
最期には主人公は少女が未来を掴んだことも知れた。
それだけが物語の唯一の救いではあるけれど、トランスジェンダーの当事者に対する「無理解」という闇は、胸に突き刺さったまま。
極端に感じる人もいるかもしれないけど、あたしはこれが現実だとも思うの。
物語も出演者の演技も素晴らしい作品だったけど、当事者の抱える問題を知るうえでもいろんな人に観てほしい映画だなって思います。