今年の冬は特に寒かったけど、もうすぐ三月。
来月の今頃には桜が咲き始めるのね。
冬が終わって、春が来るとあっという間に暑い季節になって、時間の経過の速さを毎年感じるのよね。
何もやっていないようで、実はいろいろとやっている一年。
何も変わっていないようで、けっこう変化しているのが人間よね。
現在の自分と一年前の自分が会話することができたら、全然違う考え方や価値観だったりする。
それが、前向きな方に進んでいけばいいけど、過去の方が幸福で現在は不幸なことも多々ある。
今回は、そんな主人公が登場する映画『マンチェスター・バイ・ザ・シー』を視聴したので、記事にしてみるわね~
目次
映画『マンチェスター・バイ・ザ・シー』のざっくりしたストーリー
主人公のリー(ケイシー・アフレック)はボストンのアパートで便利屋として働いている。
物語の冒頭はリーの便利屋としての日常が描かれるが、彼の様子からは伝わってくるのは無気力さや投げやりさ。
腕はいいのに愛想がなく、アパートの住民と度々トラブルを起こすリー。
私生活でも、お酒を飲みに行ったバーで他の客と暴力沙汰を起こしたり、自暴自棄な様子が伺える。
そんな日々の中、彼に突然の訃報が入った。
兼ねてより闘病生活を送っていた彼の兄・カイルが、病院で死亡したのだ。
兄は一人息子のパトリックと二人暮らし。
パトリックの母とは、彼女の重度のアルコール依存症が原因で、過去に離婚していた。
兄は自分の死後、息子の後見人にリーを指名していた。
突然の事実に驚くリー。
兄はリーに、後見人の話を一切していなかった。
兄の葬儀の手続きに甥・パトリックの後見人の問題など、兄の死をきっかけにリーは故郷である「マンチェスター・バイ・ザ・シー」に、久しぶりに帰ることになる。
パトリックは父の亡き後もマンチェスター・バイ・ザ・シーに留まることを望むが、それを頑なに拒むリー。
マンチェスター・バイ・ザ・シーには、いったいどんな過去があるのか?
映画の見どころ1:現在と過去の対比と少しずつ明かされる事実
なんかいじけていて燻っている感もする主人公のリー。
短気だし不愛想だし、こういう感じの悪い中年男っているわよね(汗)
そんなリーの過去が、兄の訃報を受けたことをきっかけに、少しずつ回想されていく。
今の無表情な生活からは想像できないほど、幸せそうな若い頃のリー。
兄や甥と冗談を言い合ったり、友達を深夜までバカ騒ぎしたり、愛する妻もかわいい子供たちもいた。
故郷「マンチェスター・バイ・ザ・シー」には、彼の幸福な記憶が詰まっている。
でも、幸福はいつだって小さなことで壊れてしまうの。
彼がなぜ心を閉ざしているのか、故郷に帰れない理由はなんなのか、現在と過去を行き来して少しずつ明かされていく。
映画の見どころ2:単純な再生の物語ではない
マンチェスター・バイ・ザ・シーでのリーの過去はとても辛いもので、彼自身もこの地に住む人々も忘れられない。
故郷を離れてもう何年も経過しているけど、リーはいまだに立ち直れていない。
その状態で、過去と向き合わなくてはいけないリー。
リーの心理描写がとても丁寧で、そこにリアリティがあると思う。
だって、あんなに荒んだ生活を送っていたのに、いきなりすっごい前向きになったら、違和感しかないもんねぇ。
物語のキーパーソンは甥のパトリック。
計らずもリーが故郷の地に再び足を踏み入れるきっかけになる彼。
どこにでもいそうなティーンの男の子で、草食化が騒がれる日本の男の子とは違い、だいぶやんちゃ。
特段、リーの過去の傷を癒すような行いをするわけではないけど、フラットな彼の態度にリーは救われたのかも。
他の登場人物はけっこう腫れもの扱いだったしね。
立ち直れなくても・・
過去に受けた傷をいつまでも引きずっていると、
『早く忘れなさい、前を向きなさい』
って言われるものよね。
その傷が自らが犯した罪なのか、それとも誰かに理不尽に傷つけられたのか、どちらにしても辛いもの。
苦しみからなかなか解放されなくて、誰かに語ったところで癒されるものでもない。
結局は自分で向き合わなくてはいけないのだけど、いくら考えたところで答えが出ない時もある。
リーは自分を許すことができず、かと言って償う術も分からず、鬱屈した日々を送っていた。
生々しい感情が蘇ってくるようで、ずっと帰れなかった故郷だけど、仕方なく滞在した日々の中で止まっていた時間が動き出したのね。
辛い過去のままで止まっていた故郷の記憶に、パトリックを通すことで希望が生まれたのかもよ。
あたしもさ、嫌な思い出がある場所にずっといけなくてね・・
人は拒否すれば関係は終わりだけど、場所は行かなくちゃいけない時もあるし。
景色とかって、けっこう忘れていた思い出が蘇ってきたりするのよね。
たださ、過去のあたしはもうどこにもいないんだし、嫌な場所にもあえて行ってみて、新しい記憶に更新すべきかもよ。
そう、リーのように再生への一歩を。